荷物を車に詰め込み、ホテルをチェックアウトした。
チェックアウトしながら、旦那が息子に「ヒッチハイカーはどんな人間かわからない。危険な事態になるかもしれない。絶対に乗せるなよ~」と言っている。
息子が「うん、そうだね。僕が将来運転する時は絶対に乗せないよ。」と答えている。
ホテルを後にして向かったのはレイク・シスキュー。
そこに向かう途中の路上で、ヒッチハイカーが手を上げている。
もちろん無視するやろ・・と思ったら、旦那がブレーキを踏み車がスローダウンした。
嘘~!えっえっ?乗せるの~?
「冗談でしょー!」と息子と私が叫ぶ。
さっき、「危険な事態になるから絶対に乗せるな。」って言ったのは誰?
旦那はお構いなしに車を停めて、どこまで行くのかを聞いている。
ヒッチハイカーは女の人だった。
(・・だから?)
「キャッスルレイクまで行くんだけど、乗せてくれない?」と言われ、
「キャッスルレイクにも行くけど、最初にレイクシスキューで降りるよ。」と受け答えている。
後部座席はクーラーボックスなど荷物がいっぱいで座る空間などない・・
なのに、「乗って・・」と旦那がクーラーボックスを息子のほうに押しやり、彼女を車内に入れた。
耳あて付きの毛糸の帽子をかぶり、膝までのスエードのブーツを履き、ノースリーブのワンピースを着ている。
格好はちょっと変やけど、シャスタは何でもありやから、まあええわ・・と思って、挨拶をした。
最初はお愛想で彼女と話をしていたが、威圧的な態度と私達を無視して旦那とベラベラ話す態度になんだかムッとしきた。
息子と私は会話に参加しなくなり外の景色に集中していた。
彼女は1人で鼻歌を歌い、その場を凌いでいる。
数分でレイクシスキューに到着し、車から降りた。
彼女はこの駐車場で別の車を探すと言っている。
別の車が見つからなかったら、キャッスルレイクまで一緒かも・・
と思いながら手を振った。
彼女は旦那に駆け寄って来て、コソコソと話をしている。
私と息子は先に歩き始めた。
駐車場から湖までのトレイルを歩く。
旦那も後から追いついてきた。
歩きながら息子と私は旦那に非難轟々。
「なんで乗せたんーー?」と旦那を攻めまくった。
「もう絶対にしないから・・」と約束する旦那。
「信じられへんー!」と、なかなか平常心に戻れない私だった。
そんな私達とは裏腹に、湖とシャスタ山は整然とそこに居た。
何もかもが静かで、とても美しい。
静けさの中、心がだんだん安らいでくる。
さっきまでの心の葛藤が嘘のように消えていく。
旦那とも息子とも離れて、1人で瞑想・・・
木漏れ日がやさしい。
静寂の中で、さっきのことをもう一度思い起こしてみた。
きっと何か意味があるのだろう。
シャスタは思いがけないことが普通に起こる場所なのだから・・・
しかし、ふと1時間前のことを思い出し、「彼女が駐車場に居てるかも・・」とちょっとドキドキしながら車に戻った。